音の出所

音の出所

そこでは　みな常にいらいらと　動き回っていた
結婚式だ　祝勝会だといって　バカ騒ぎし
戦争だ　デモ行進だといって　拳を突き上げている
パチン　パチン　パチン　パチンと
耳の奥を引っかく　小さな音を立てながら
かすかに　でも　絶え間なく
高級な時計が刻む　精確な秒針のように可愛げなく
時に遠く　また近く
ただ　確かに音は大きくなっているようだ
ああ、あんまり　あんまり絶え間がないから
僕は　音の出所を気にすることをやめてしまった
そう、あんまり　あんまり音が大きくなるから
僕の心臓は　ドキドキしてしまった
だから僕は結婚式を抜け出して　祝勝会は延期にし
戦争に反対して　デモ行進の中止を訴えた
そして　君の二つの掌を引き寄せ
両耳に当てて耳をふさいでしまった
すると急に体は力を失い　僕は膝から地面に落ちた
体をしたたか地面に打ちながら
僕は　それまで無意識のうちに筋肉を緊張させ
立ち、歩き、そして話をしていたことに気がついた
弛緩した体は　ぐにゃりとうねり
涙があふれ　口は開き　そのうち呼吸が止まって
いつしか　音はかすかになった
まるで　音が　小さくなったのではなく
音源から　僕が　遠ざかったみたいだ
最後の音が鳴り、消えていく瞬間
僕は　音の出所を感じた気がして　少し笑った

詩…さとうようすけ